春の夢
制作 さすらい人 2001〜
1973. 無 題
チーコ ごらん 空は真青
夏の雲は いかにも夏らしくのび
山の緑は どこまでも深い
そして 僕らは 二人
子供のようにして 旅の中にいる
少し前には 思いもよらなかったことだ
今 君の姿は 舞い遊ぶ蝶のように 優しく楽しげだ
君の声は 爽やかさに充ちている
私の心を打ち鳴らす風が君
私は風鈴
けれど今は ただ 君に出逢ったことのおそさの 微かなる悲しみの笑みと共に
私は君を見つめよう
この素敵な冒険を 美しい物語とするために 私は尽くしたい
君の心を心地よくすればするほど 私も心地よくなるだろう
さあ チーコ 君は 何を望む?
君の 喜びの果実を私に摘むように命じてごらん
影
歩きながら 自分の足元を見る
足先から斜前に 薄く影の足が生えて 僕に調子を合わせている
生きるためのなんの意志もなく 何も考えず
僕が歩くから仕方がないとすら思わずに 影も歩いている
じっと見つめているうちに
いつしか僕も影の一部になる
いつの間にか 影だけが歩き 僕の姿は消えている
本体のないまま 影の足だけが 覚束無い足取りで進んでいく
何処へ ということもなく いつまで ということもなく
影の足だけが進んでいく
日差しのなくなることを知ろうともせず・・・・・
1989/10/21