弦楽四重奏曲「旅人のモノローグ」 りぶん氏 編         

   第一楽章   Largo−Alleglo moderate                  全曲ダウンロード 
   第二楽章   Andante con espressione          
   第三楽章   Scherzo  presto (第1部提示部まで)         全曲ダウンロード 

 
りぶんさんには、PCVAN時代から、本当にお世話になりました。私の拙い曲に目をとめて
下さったのは、幸運としかいいようがありません。以来、機会あるごとにメールでアドバイスと
励ましを頂きました。この曲を続けられたのも、りぶんさんと、もう一つの特別展示室のShige
さんのお二人のおかげと感謝しています。
 このりぶんさんの編曲からは、プロの手になる本当の室内楽の響きが聞こえてきます。その技
をお聴き下さい。
 りぶんさんは、味わい深い文章をお書きになることも申し添えます。りぶんさんのMIDIに
関する格調高い講義「Shigeオケをパクる」の全文が、次のホームページで見られます。

      Classic MIDI’s VillegeのMIDI音楽室



 りぶんさんの了解を得ましたので、在りし日のPCVANCLAのOSLに、このアレンジ版
と一緒に公開された、りぶんさんのDOC全文を以下に掲載しました。
   ※文章中に出てくるCM64は過去のものとなっていますが、原文を尊重してそのままに
    しました。

               
特別展示室
特別展示室
特別展示室
------------------------------------------------------------------------
●曲名    弦楽四重奏曲 イ短調「旅人のモノローグ」第1楽章, 第2楽章
●作曲者   さすらい(VQA83922)
●楽譜出典  作曲者自筆譜
●入力者   りぶん(CYE73582)
●使用ハード Roland CM-300 (GS standard, SC-55完全互換)
●使用ソフト レコンポーザ/98 Ver2.5F
●ファイル名 MNLG1_GS.RCP, MNLG2_GS.RCP
------------------------------------------------------------------------

●CM-64 お蔵入りモード

 先般ようやく SC-88 を入手いたしました。 私もこと音源に関しては、Roland
社にはこれまでずいぶん奉仕したことになります。
 ところがいかんせん、現在の私のシステム構成では、コンセントやアンプの入
力端子、ケーブルそのものなどがどうしても足りず、既存の音源のうちどれかひ
とつをお蔵入りにせねば SC-88 を接続できないことが明らかとなりました。 止
むを得ず、 昨今ほとんどデータの流通のみられない CM-64 に、ひとまず犠牲に
なってもらうことにしましたが、そこで困ったのが 05card です。
 周知のように、ソロ弦の音色に関する限り、GS音源は 05card のリアリティに
及ばざること甚だしいのでして、 ことに室内楽データにおいては、05card は極
めて大きな存在でした。CM-64 をお蔵入りするということは直ちに、室内楽デー
タの可能性の大部分を放棄することを意味します。
 せめて GS ソロ弦がもう少しどうにか鳴ってくれれば、こう淋しい思いもしな
くてすむのだがなあ、 と思っていた矢先、達人K&Aさんの手になる SC-55 の
ための「メンデルスゾーンのオクテット」を聴く機会を得ました。驚くなかれ、
あの悪名高き GS ソロ弦が、ここではすっかり弦楽八重奏そのままを奏でている
ではありませんか。どんな魔術か知れませんが、ともかくやりようによっては、
GS音源でも十分にソロ弦を奏出し得るのでした。
 私の腕ではK&Aマジックには到底及びもつきませんが、とりあえず 05card
用の旧作を GS音源 SC-55 用に改定するところから、手をつけてみました。

 データ制作音源には主に CM-300 を用いております。 無印 SC-55 に完全に等
しい音がするはずです。 もちろんその上位互換たる SC-55mkII でも全く問題は
なかろうと思われます。
 SC-88 で鳴らす場合でも、自動的に 55MAP 音色に切り替わるように設定した
つもりです。 私の曖昧な耳では、55MAP の音色はほとんど SC-55 と区別がつき
ませんでした。


●曲目について

 さて、私の旧作データはどうせたいしたものでないのですから、いわばどうで
もいいのでして、 05card を手放せない最大の原因は、実にこの曲の存在であり
ました。なにしろ現在他では決して聴けない曲なのですから。

 さすらい(VQA83922)さんの作曲された、CM-64 + 05card による弦楽四重奏曲
「旅人のモノローグ」は、これまでに全4楽章のうち第3楽章までが一通りの完
成を見ておりまして、 当CLAでは「ISHと資料準備室」の方へ、.RCP デー
タの形でアップされました。雄大な構想に加えて、郷愁をたたえたメロディー群
にあふれ、聴けば聴くほど人をひきつけて放さない、なんともすばらしい曲です。
 曲の詳しい生い立ちは、このオリジナルデータに同梱の .DOC をご覧いただき
ましょう。 CM-64 + 05card をお持ちの方には、ぜひご一聴をお薦めしたく思い
ます。

 現時点でいまだ未完成の大曲です。続きを書いていただかなくてはならない作
曲者に、始めからGS版にしてくれとねだるわけにもいきません。
 そこで、手元に自筆譜があるのを幸い、僭越とは思いましたが、お蔵入りモー
ドの音色設定を実地にためす機会にもと、私の手で改めて楽譜からの演奏を試み
ようとしました。

 ところが……楽譜はどうも、 DTMカルテットが原曲だけあって、室内楽という
よりもはるかにシンフォニックであり、ほとんどオーケストラの圧縮譜かと見紛
うばかりなのです。この曲には、名人Shigeさんのものされた感動的なオーケス
トラ編曲「さすらい交響曲」がありますが、あの編曲があんなに見事にさまにな
ったのも、この楽譜を一見するとむべなるかなであります。
 私の DTM 演奏のよりどころは、実際の楽器演奏を想定すると言うに尽きます。
弦楽四重奏の打ち込みとならば、生の弦楽四重奏にあり得ない表現を以ってして
は、私には全く手も足も出ないのです。
 だが、この譜面を「弦楽四重奏で」鳴らすとすれば、物理的制約上からも、ど
うしてもいくつかの音を変更せざるをえない。しかし、作曲者が痛切な思いで選
んだに違いない音を、あえて動かすというのは、どんなものか……。悩ましいと
ころでした。

 結局、あえて最小限の編曲に踏み切りました。オリジナルが DTMカルテットか
らの発想であるとすれば、生カルテットへの「編曲」としてなら、もひとつ別種
の演奏として、成り立つのではないか。
 もちろん原作者の意図をそこなわないようにとは極力留意したつもりですが、
Shigeさんのオーケストラ版のように何かを付け加えるまでには、とてもいきま
せんでした。それどころか、理解が足りずにあちこちで破綻が出ているかもしれ
ません。
 なんのかんの言っても編曲という以上は、原作者の選んだ音をあちこち変更し
ているのは確かなのですから、当然原作者の耳には、各所で著しい違和感を生ぜ
しめるはずなのです。ところが、原作者さすらいさんは、この拙い演奏を、快く
許してくださいました。感謝の言葉もありません。

 入力していて、こんなに夢中になれた曲も、近ごろちょっとありませんでした。

 同梱のデータは、第2楽章までです。第3楽章は、若干の入力を試みたのです
が、原作の方でなお改訂の筆が入る模様ですので、ひとまずそちらの完成を待つ
ことといたしました。全4楽章完成の日が遠からぬことを、心から祈ります。


●さすらい作曲/弦楽四重奏曲 イ短調 「旅人のモノローグ」

 ・第1楽章 Largo 〜 Allegro イ短調
  3/4拍子の長大な序奏を持つ、4/4拍子ソナタ形式の主部。演奏時間約22分。
  展開部の緻密な構成と圧倒的な推進力は特筆ものです。既出素材を次々と回
  想するコーダがつきます。

 ・第2楽章 Andante con espressione ホ短調
  多様な歌謡的メロディーを含む、拡大された3部形式。演奏時間約18分。
  中間部のレチタティーヴォを中心として、若干の展開を含みながら、種々の
  メロディーがほぼ前後逆順に回帰していきます。冒頭ヴィオラの奏するモッ
  トーは、すこぶる印象的です。


                      1995.1.5 りぶん(CYE73582)識

ご意見・ご感想等は
掲示板「切り株の森」へ
ゲスト掲示板「道しるべ」へ