2003年10月8日、私は都内のある病院に入院した。糖尿病だった。10月31日の退院の日まで悶々としたわけではない。これまで名前はよく聞いていたが、組織的な知識のなかった糖尿病について理解を深めるには十分の時間があった。また、入院の間に、病院が、2週間の教育プログラムを用意していてくれた。
 そんなわけで、自分の中の考えを整理するために、1度まとめをしてみることにした。あわせて、ホームページに掲載することにした。糖尿病に関心のある方、もしかしたら予備軍かもしれないかた、実際に発症しているのに気がつかないでいる方のお役にたてるかもしれないと思ったからである。
 ここの記事は、今の時点での私なりの理解である。思いこみや勘違いもあるかも知れない。糖尿病の理解と解釈、療法に新しい進展があるかも知れない。ご覧になった方は、ここだけでなく、他のホームページもあわせてご覧になって頂きたい。他のすべてのこと同様、1つの情報だけですませてしまうのは危険な行為だと思う。検索すれば、糖尿病関係のホームページはたくさんあるはずである。(豆乳と打ち間違えないように。) 私自身に話を戻すと、退院はしたが、決して治ったわけではない。これから糖尿病との多分長いおつきあいが始まる。1日に何回か指先に針を刺して微量の血を採り、センサーで血糖値をはかることと、インシュリンの注射をすることを毎日続けていくわけである。針をさすから、”はり”のあるのある生活ということにしておこう。食事療法や運動療法については、別のところでまた触れることにする。
制作 さすらい人
糖尿病って何

 人間のエネルギー源は、ブドウ糖の形で血管の宅配?網を通して全身に運ばれ、筋肉などに取り込まれる。血管内のブドウ糖の値を「血糖値」という。当然のことながら、食事前の空腹時と食事後(ピークは2時間後)では、血糖値は違う。その血糖のコントロールには、たくさんのホルモンが働く。飢餓に備えて、血糖をあげるホルモンはいくつもあるが、下げる働きをするホルモンはインスリン1つしかない。糖質が筋肉細胞に取り込まれるのに、細胞の戸を開ける鍵の役目をするのがインスリンである。食事による血糖の上昇に合わせて本来必要なだけのインスリンが分泌される。それによって糖質が筋肉に取り込まれてエネルギーとして利用され、食後高くなった血糖値はもとの値にもどる。
 糖尿病は、そのインスリンの作用不足によって高血糖状態になる病気である。インスリンは膵臓のランゲルハンス島(β細胞)で作られて血液中に分泌される。インスリンの作用不足は、膵臓からの分泌が少なくなった場合と、体の組織のインスリンに対する反応性が低下した場合に起こる。反応性の低下で考えられるのは、インスリンの分泌のタイミングがずれてしまう場合、何らかの妨害因子(例えば脂肪細胞)が存在する場合などが考えられる。私の場合も、検査によれば、インスリンの前駆体のCペプチドは、尿中から十分すぎるほど見つかるのだが、何らかの原因で必要な働きをしていなかった。
 なお、糖尿病には、T型とU型があり、T型は何かの原因で膵臓からインスリンが分泌されない(ウィルス説がある)ので、インスリンの投与が必要になる。若いときからの糖尿病に見られる。それに対しU型は、糖尿病になりやすい遺伝的体質に、食べ過ぎ、飲み過ぎ、ストレス、運動不足、不規則な生活などの素因が加わって発症する。暴飲暴食などで、遺伝的素因が無くても発症する可能性がある。私の場合、暴飲暴食・運動不足はなかったものの、遺伝的素因にストレス・不規則な生活が加わって発症したものと思われる。

症状は

 血糖値が上昇すると、口渇、多飲、多尿、だるさ(倦怠感)、体重減少、意識障害、昏睡などの症状が出る。尿中に糖が出ることで、尿が独特の匂いを出すこともある。が、血糖の上昇が軽度で、合併書の進行するまで自覚症状がほとんど無いことも多い。私の場合、職場の定期検診のおかげで分かったとも言える。2001年6月の検診で血糖値209、翌2002年6月には157で一安心したのもつかの間、2003年6月には279になり、再検査時の8月にも250で、糖尿病と確定。(別の日に行った検査で2回以上確認されれば糖尿病と診断される。)9月にはいると口渇、多飲の症状が出てきた。そして、10月1日の検査では、(食事後だが)519にまで上昇していた。また尿中にも糖が認められた。
 日本糖尿病協会の糖尿病健康手帳には、糖尿病の診断基準(1999年)が次のように出ている。

   糖尿病(型)  空腹時血糖値 126以上  随時血糖値 200以上  のいずれかひとつ
   正常(型)    空腹時血糖値 110未満
   境界型     上のどちらにも属さないもの

    ・別の日の検査で2回以上確認されれば糖尿病と診断される。
    ・糖尿病型であっても、次のうちの1つがあればやはり糖尿病と診断される。
      1.典型的な症状がある。(口渇、多飲、多尿、体重減少など)
      2.HbA1cが6.5%以上
      3.確実な糖尿病網膜症の認められた場合


HbA1cについて

 HbA1cはヘモグロビン・エー・ワン・シーと読む。糖化ヘモグロビンのことである。高血糖下糖とヘモグロビンが結合すると離れなくなってしまう。骨髄で作られた赤血球が寿命を終え、脾臓などで分解されるのに120日程度。その間に高血糖にさらされて出来た糖化ヘモグロビンの割合を調べることで、1〜2ヶ月ぐらいの間の血液の状態を知ることが出来る。それで、HbA1cは糖尿病を調べる指標とされる。私の場合、10月1日のHbA1cは10.8、退院後の11月12日には8.6だった。(10を越えたら即入院ともいわれた。)

参考(糖尿病健康手帳から)

 ○血糖コントロールの見方
    理想値    食前血糖値 70〜110  食後2時間値 100〜140  HbA1c 6%以下
     良      食前血糖値 130以下   食後2時間値 200以下     HbA1c 7%以下

 ○各種検査正常値
    HbA1c              5.6%以下
    糖化アルブミン(GA)     12〜16%以下
    血清フルクトサミン(FRA) 205〜285μmol/1
    総コレステロール       120〜220mg/dl
    中性脂肪             50〜150mg/dl
    HDL−コレステロール     40mg/dl以上

合併症について

1.三大合併症
 
長期にわたって高血糖状態が続くと、血管や神経組織が悪影響を受ける。特に、細小血管と言われる細い血管や体の末端に張り巡らされている末梢神経は高血糖の影響を受けやすい。その結果、細い血管の集まっている目や腎臓に糖尿病網膜症糖尿病性腎症が引き起こされる。また、末梢神経が冒されることによって糖尿病性神経障害が引き起こされる。頻度の高いこの3つを糖尿病三大合併症という。
 糖尿病網膜症は、自覚症状のないうちに進行し、網膜に網の目のように張り巡らされた毛細血管が冒され、最終的には、視力が低下、網膜剥離などを起こし、失明にいたる。(年間3千人の糖尿病患者が失明しているという。)
 細い血管の集まった腎臓の糸球体という器官が高血糖で冒される。これも初期には自覚症状がない。進行すると、むくみから、腎不全や尿毒症を招く。ここまでいくと人工透析が必要になる。(年間七千人の糖尿病患者が人工透析導入。)
 神経障害は、末梢神経(手足を動かす運動神経、熱さや冷たさや痛みなどを感じる知覚神経、臓器や器官の働きを調節する自律神経)が冒される。初期の段階から自覚症状があらわれることが多い。膝から下、特に足の裏になどにしびれやぴりぴりといったさすような痛みがある。ふくらはぎの痙攣、立ちくらみ、発汗異常、下痢・便秘、インポテンツなどもみられる。
 私の場合こむら返りが急に多くなった、9月に急に汗が噴き出るようになった、右足の薬指がしびれるような感じがあったのはこの中の神経障害だったのかも知れない。こむら返りと発汗はなくなっている。

2.そのほかの合併症など
 ○動脈硬化性の疾患への影響が大きい。(動脈硬化の進行が健康な人に比べて大きい。)
  ・狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの危険。
  ・神経障害を合併していると、心筋梗塞などから来る胸の痛みを感じないことも多く、処置が遅れて危険。
 ○神経障害がひどくなるとしびれや痛みを感じなくなり、靴擦れややけどやけがに気づかず手当が遅れる。
   また、血管障害で足先に栄養が行き渡らないうえに、高血糖のため最近への抵抗力が落ちている。
    →皮膚潰瘍や壊疽に進行し足の切断というケースも。(水虫さえも壊疽の原因になることがある。)
 ○感染症を起こしやすく、歯周病になりやすく、ブドウ糖の増加で歯の根本が虫歯にかかりやすくなる。

3.合併症を別の資料で整理してみると
 ○急性合併症
   ・糖尿病性昏睡
 ○慢性合併症
   ・糖尿病性細小血管障害
     ★糖尿病性腎症 ★糖尿病性網膜症 ★糖尿性神経症
   ・大血管障害
     ★虚血性心疾患 ★脳血管障害 ★末梢血管障害
       ※高血圧、高脂血症などの他の動脈硬化の危険因子が共存することが多く、心血管障害の発症頻度は
         2−5倍といわれる。



三大療法について
 1.食事療法
 2.運動療法
 3.薬物療法



薬について





低血糖について