制作 さすらい人 2001〜
映画の棚
赤い風船(Le Ballon Rouge)
1956年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞
1956年フランス・シネマ大賞受賞
1956年ルイ・デリック賞受賞
脚本・監督 アルベール・ラモリス
撮影  エドモン・セシャン       音楽  モーリス・ル・ルウ
主演  パスカル・ラモリス
1956年 作品   34分

          ビデオ  Victor  CSP1401
あらすじ
 ある日少年は、赤い風船を見つける。少年と風船は仲良しになる。風船は、少年のそばをはなれない。少年が手を放しても、風船はあとをついていく。少年が学校にいる間も、風船は待っている。少年をしかった先生を追いかけてつっついたり、道で出会った少女の青い風船の後を追いかけて寄り添おうとしたり、風船は、生き物のようにふるまう。
 腕白たちの集団が、少年の赤い風船を奪おうと追いかけ回す。少年は一生懸命に逃げ回るが、とうとう腕白たちに捕まえられる。そして、赤い風船は腕白たちに連れて行かれる。逃げられないように風船をひもの先にしばった腕白たち。みんなで、風船を標的にして、石をぶつけたりパチンコでうったりする。やがて石が命中した赤い風船は、少しずつしぼんでいき、地面に下りてくる。腕白たちのひとりが、足で踏みつけて赤い風船を割ってしまう。
 そのとき、不思議なことが起こる。街のあちらこちらで、子どもたちの手から風船たちが飛び立っていく。子どもたちばかりではなく、風船売りの手からも、たくさんの風船たちが空に向かって飛び立っていく。
 街のあちらこちらから飛び立った風船たちは、列を作り、群れを作り、次々と大空に浮かび大きな集団になっていく。そして、赤い風船を割られてべそをかいていた少年の上に舞い降りていく。やがて、風船たちと一緒に少年は空に飛び立っていく。

 34分の全編が、ほとんど映像だけでつづられたこの映画は、美しい叙情詩である。セリフは、少年が何回か赤い風船に向かって呼びかける「ballon!」の一言だけである。
 この映画を私が見たのは子どもの頃だ。以来なぜか各場面の映像が、私の心の中に住みついて離れなくなってしまった。名作だと思う。まだビデオが売られているかどうかはわからないが、大人にも子どもにもお勧めしたい佳品である。

 監督のアルベール・ラモリスは、この前に『白い馬」という作品を撮って知られていた。「赤い風船」のあとも、「素晴らしい風船旅行」(1960)、「フィフィ大空を行く」(1964)、「パリの空の詩」(1967)などの作品を撮っている。空中に魅せられた人のようで、空を舞台にした作品が多い。1970年「恋人たちの風」を撮影中墜落事故で亡くなったということである。
 1963年には、日本のフランス映画祭に、「シベールの日曜日」のセルジュ・ブールギニョン監督と共に出席されたそうである。「赤い風船」に主演したパスカル・ラモリスは、アルベール・ラモリス監督の息子である。